
卵巣腫瘍ってどんなもの?基礎知識を身につけよう
卵巣に起きる症状の一つに、「卵巣腫瘍」と呼ばれるものがあります。卵巣腫瘍にも良性と悪性があり、悪性のものができると妊娠に差し支えるため、治療が必要になります。
しかし、自覚症状がないこともあるため、検査をしてはじめて見つかることも。この卵巣腫瘍についての基礎知識として、種類や原因、症状、対策などを解説します。
■卵巣腫瘍とは?
子宮の両端には、「卵巣」といううずらの卵大の2つの臓器があります。この2つの卵巣で、卵子を排出する卵胞(らんほう)が育ちます。また、卵巣は女性ホルモンを分泌する重要な役割も担っています。
卵巣腫瘍とは、この左右の卵巣が腫れている状態をいいます。たいていの場合、左右どちらか一方だけが腫れますが、両方が腫れることもあります。
もともと、卵巣は腫瘍ができやすい臓器であるといわれており、その腫瘍の種類も複数あります。
■卵巣腫瘍の種類
卵巣腫瘍には、良性と悪性のものとがあります。しかし、その80%以上が良性の腫瘍といわれています。腫瘍の種類について見てみましょう。
まず、卵巣にできる腫瘍は、大きく分けて2つがあります。「卵巣のう腫」と「充実性腫瘍」です。
●卵巣のう腫
卵巣のう腫は、卵巣腫瘍のうちの約80%を占め、そのほとんどが良性といわれています。卵巣の内部に、液体や脂肪がたまり、やわらかいのが特徴です。この卵巣のう種は、中身の違いから、さらに次の4種類に分けられるといわれています。
(1)漿液性(しょうえきせい)のう腫…透明な液体がたまるもので、複数の袋ができることがあり、悪性になる可能性もあります。年齢を問わず最も多く見られます。
(2)粘液性のう腫…ゼラチンのような粘液がたまるもので、非常に大きくなるのが特徴です。時には人の頭くらいの大きさになることもあります。閉経した後の女性に多く起こります。
(3)皮様(ひよう)のう腫…胚細胞の元になる細胞が腫瘍化したもので、毛髪、歯、目などの組織を含んだドロドロしたものがたまります。20~30代女性に多く起こります。
(4)チョコレートのう腫…子宮内膜症が卵巣内に起きたもので、生理の血液がたまります。20~30代女性に多く起こります。
●充実性腫瘍
充実性腫瘍は、卵巣のう腫と比べるとかたく、多くの場合が悪性といわれています。悪性の場合は「卵巣がん」です。良性の場合は、卵巣のう種同様の治療を行います。
■卵巣腫瘍の症状
卵巣腫瘍の主な症状は、お腹が張って苦しくなる膨満感や、下腹の痛み、頻尿、腰痛などの症状があります。ただし、卵巣の腫瘍がまだ小さい場合には、自覚症状がないことが多いのも特徴です。
よって、症状が現れた頃には、すでに腫瘍が大きくなっている可能性があります。
また、お腹の中で卵巣腫瘍がねじれてしまう「茎捻転(けいねんてん)」が起こることがあります。茎捻転が起こると、腫瘍が破裂して腹腔内にその中身が漏れることもあり、下腹部に激痛が襲うといわれています。
卵巣腫瘍の有無を自分でチェックする場合は、以下を症状が目安になります。
●下腹部の膨らみ、しこり
●下腹部痛
●腰痛
●頻尿
●便秘
●生理痛が強くなった
●生理の経血量が増えた
もちろん、必ずしもこれらの症状が卵巣腫瘍を示すとは限らず、他の病気の可能性もあります。いずれにしても、これらの症状に思い当たる節があれば、早めに婦人科を受診しましょう。
■卵巣腫瘍の原因
卵巣腫瘍の原因は、どこにあるのでしょうか。しかし、良性の卵巣のう腫の原因については、まだ分かっていません。一方、悪性の卵巣がんの原因には、排卵する回数の増加が挙げられています。なぜ、昔より女性の排卵回数が増えたのかというと、現代女性が生涯に産む子どもの数が減っているからです。妊娠中は排卵が止まるため、妊娠期間が長かった昔の女性よりも、現代女性のほうが排卵回数は多くなります。
また、現代女性の食生活にも問題があるといわれています。食生活の欧米化で、動物性脂肪やたんぱく質の摂取が増えたことなどが影響していると考えられています。
■卵巣腫瘍の対処法と治療法
卵巣腫瘍は、無症状のことが多いため、内診や超音波検査、MRI検査などで偶然発見されるというケースも少なくありません。
もし、検査によって卵巣腫瘍があることが分かっても、良性でそれほど腫瘍が大きくなければ、経過観察になります。腫瘍がだんだん大きくなってしまうと、手術が行われることが多いようです。
良性の腫瘍の場合、手術を行ったとしても腫瘍だけを摘出し、卵巣そのものは温存されることが多いといわれています。特に、将来的に妊娠を希望する場合には、卵巣はできるかぎり残す方向になります。しかし、腫瘍が大きく成長していたり、卵巣の周りの臓器とくっついたりしている場合は、卵巣を摘出するケースもあるようです。ただ、卵巣は1つでも妊娠はできるといわれているため、片方の摘出を行っても不妊になるとは限りません。一方、閉経後の女性の場合は、卵巣と卵管を摘出することもあります。
卵巣がんなど、悪性の腫瘍であった場合は、手術で腫瘍を摘出した後に、抗がん剤による化学療法が行われます。
卵巣腫瘍は、良性のものと悪性のものとがあり、いずれも原因はまだはっきりとは分かっていません。しかし良性・悪性問わず、早期発見・早期治療が先決です。もし今回解説した中で、気になる症状があれば、すぐに婦人科を受診しましょう。

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