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日中に眠くなる人は要注意!ナルコレプシーの原因

ナルコレプシーが発症する原因について、ドクター監修の記事で解説します。ナルコレプシーに深く関係していると考えられている「レム睡眠」「オレキシン」「ヒト白血球抗原(HLA)」について理解しておきましょう。

ナルコレプシー患者は「なまけ病」と誤解されがちなことが問題です。患者だけでなく、家族や周囲の人も正しく理解しておきましょう。

「なまけ」と誤解されやすいナルコレプシーとは

narco(麻酔・睡眠)とlepsy(発作)というラテン語から成り立つナルコレプシーという病名は、1880年にフランスの医師によってつけられました。文字どおり、眠気や脱力が発作的に生じる病気です。睡眠障害のひとつで、日本では「居眠り病」と呼ばれることもあります。

ナルコレプシーのもっとも代表的な症状は、日中、我慢できないほどの強い眠気にくりかえし襲われる「睡眠発作」です。日中の眠気は、睡眠不足のときや食後などに誰にでも起こり得ます。しかし、ナルコレプシーの場合は、このような条件に関係なく起こることがほとんどです。しかも、重要な会議中や試験中など、通常では考えられないような状況でも寝入ってしまうという特徴があります。声をかけたり、ちょっとした刺激を与えたりするとすぐに目を覚ますので、なまけによる「居眠り」と勘違いされることもあります。

また、感情の変化をきっかけに体の力が抜けてしまう「情動脱力発作」をともなう人も多いです。大笑いしたときや驚いたとき、興奮したときに、ひざや腰などの力がガクンと抜けてしまう発作です。通常は数秒以内に回復しますが、まれに笑っている間ずっと続くケースもあります。

「眠れない」という悩みを抱える不眠症はよく知られていますが、このように我慢できないほど眠くなってしまう病気もあるのです。

ナルコレプシーの4つの特徴的な症状

以下ではナルコレプシーの特徴的な4つの症状を「主症状」と「副症状」にわけて説明していきます。

主症状「日中の過度の眠気(睡眠発作)」

ナルコレプシーの代表的な症状は、日中の過度の眠気(睡眠発作)です。夜にしっかり寝ているつもりでも昼間に強烈な眠気にくり返し襲われ、このような発作が状況や場所に関係なく突然起こるのが特徴です。

特に、読書や会議中など、単調な状況で睡眠発作は起きやすいといわれています。このような状況では健康な人でも眠くなることがありますが、ナルコレプシーの場合は眠気に耐えることができません。また、単調な状況に限らず、車の運転中や会話中、食事中など、ナルコレプシーの睡眠発作は複雑な作業中にも起こり得ます。

睡眠発作の発生は予測することができません。睡眠発作がほとんど起こらない日もあれば、1日に数回くり返すこともあります。また、数分でおさまることもあれば、数時間続くこともあります。

副症状「情動脱力発作」

情動脱力発作とは、強い感情の変化にともなって急に体の力が抜ける症状です。怒り・笑い・驚き・喜び・恐怖といった衝動によって、ひざや腰の力が抜けたり、あごの力が抜けてろれつが回らなく(会話が上手くできなく)なります。ときには、全身の力が抜けて床に崩れ落ちることもあります。しかし、このような発作はほんの数秒程度で回復します。

ナルコレプシーの場合、最初に睡眠発作の症状が現れるケースがほとんどで、その2~3年ほど後に情動脱力発作が出始めることが多いです。情動脱力発作は、ナルコレプシー患者のおよそ4分の3にみられるといわれています。

副症状「入眠時幻覚」

通常では、入眠時にまずノンレム睡眠(筋肉の活動は休止せずに脳だけが休息状態になる睡眠状態)に入り、その後1~2時間ほどでレム眠(筋肉は休息していても、脳が覚醒に近い状態で活動している睡眠状態)に移っていきます。ところが、ナルコレプシー患者は寝入ってすぐにレム睡眠が出現します。そのため、寝入りばなに鮮明な夢を見ることが多いです。また、部屋の中に霊のような人影や奇妙な動物の姿などを実際に見ているように感じることがあります。これが、入眠時幻覚です。人によっては、入眠時幻覚がナルコレプシーの最初の症状であることも多いといわれています。

副症状「睡眠麻痺」

睡眠麻痺とは、いわゆる金縛りのことです。覚醒と睡眠の移行時期にみられる現象で、身体を動かすことが一時的にできなくなります。このような運動不能の状態は、数分で回復するので心配はありません。

上記の症状は、健康な人(特に子どもに多い)にもしばしば起こる現象です。また、ナルコレプシー患者だからといって、「睡眠発作」「脱力発作」「入眠時幻覚」「睡眠麻痺」が必ずしも起こるとは限りません。この4つの症状がすべて認められている患者は、全体のおよそ10%といわれています。

ナルコレプシーの原因

ナルコレプシーの根本的な原因は、今のところ解明されておらず、現在も研究段階にあります。よって、現段階では根治療法もありません。以下では、ナルコレプシーの原因として現在知られていることについて解説します。

(1)レム睡眠の出現異常

ナルコレプシーには、脳を目覚めさせる構造に障害があるほか、レム睡眠が出現する回数と量の異常性が深く関係していると考えられています。

ナルコレプシー患者には、睡眠と覚醒のリズムに大きな乱れがあるのが特徴です。それにより、日中に過剰な眠気がくり返し発生していると考えられます。また、通常の人ではあり得ないようなタイミングでレム睡眠に入ることもわかっています。このような原因により、睡眠発作や情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺といった、ナルコレプシー特有の症状を引き起こすことが推定されています。

実は、このような状態は、ある条件下で健康な人にも起こることがあります。それは、レム睡眠時です。眠りに落ちてから約2時間後のレム睡眠の段階に入ると、体が麻痺したときと同様に動かなくなるのです。ある研究でナルコレプシー患者の脱力発作後の状態を観察したところ、そのままレム睡眠に入って夢を見ることもあったとの報告もあります。

つまり、ナルコレプシーの症状は、通常の眠りと同様の状態が突如発生したものと考えられるのです。実際に、睡眠発作により眠ってしまったナルコレプシー患者に強い刺激を与えると、すぐに目覚めます。

通常、大人の場合は単相睡眠※1が一般的ですが、睡眠のリズムに乱れがあると考えられるナルコレプシーの場合は、昼夜に関係なく眠りをくり返す多相睡眠※2に近いと言えるでしょう。

※1(単相睡眠)~夜にまとめて眠る睡眠。

※2(多相睡眠)~寝たり起きたりをくり返してとる睡眠。人間の場合、生まれたばかりの新生児がこれにあたり、1日の3分の2を眠って過ごす。

(2)神経伝達物質、オレキシンの異常

テキサス大学の柳沢博士らは、実験の結果、オレキシンが産生されないマウスはヒト・ナルコレプシーとよく似た症状を示すことを報告しています。オレキシンとは、脳の視床下部から分泌される、食欲のコントロール作用があるタンパク質です。この神経伝達物質がナルコレプシーと深い関係があるという発見は、画期的なものでした。

また、スタンフォード大学のミニョー博士らは、実験によってヒト・ナルコレプシーと同様の睡眠発作や脱力発作がみられる犬のオレキシンに異常があることを突き止めました。

ヒト・ナルコレプシーについても、現在も進行中のナルコレプシー患者の死後脳の研究により、オレキシン神経の欠損が判明しています。

(3)特徴的なヒト白血球抗原(HLA)

1984年には、東大病院の本多博士のグループが135人のナルコレプシー患者の血液検査を行い、その結果、ナルコレプシー患者全員が同じタイプのヒト白血球抗原(HLA)を持っていることを発見しました。

ヒト白血球抗原(HLA)は、免疫系を識別するために使われている複雑な抗原系です。しかし、現在までにナルコレプシーで免疫系の異常は見つかっていません。こうしたことから、ナルコレプシー患者の体内では、なんらかの自己免疫機能が働いているのではないかと考えられています。

さまざまな研究により少しずつ明らかになっているナルコレプシーのメカニズムですが、症状が起こる根本的な原因については、まだ不透明なままです。ストレスなどの環境因子や遺伝的体質、脳の性的成熟との関係など、さまざまな原因も考えられており、今後の研究による解明が期待されています。

ナルコレプシーのセルフチェック方法(エップワース眠気尺度)とは

ナルコレプシーのセルフチェックは、「エップワース眠気尺度」でチェックをすることができます。

エップワース眠気尺度のもととなるESS(Epworth SleepinessScale)は、1991年にMurray W.Johns と ShunichiFukuharaによって作成されました。イギリスの胸部疾患学会のガイドラインで眠気を評価するためにESSを使用することが推奨されているほか、世界中で用いられているチェックテストで、8項目に答えることで主観的な日中の過度の眠気を測定することができます。ナルコレプシーをはじめとした睡眠障害に関してのみならず、一般的に眠気を測定する方法としても用いられています。

実際にチェックしてみましょう

8項目をチェックしていきます。それぞれの項目に関して、

「眠くなることは、めったにない」場合は、0点
「時々は眠くなる」場合は、1点
「眠くなることが多い」場合は、2点
「いつも眠くなる」場合は、3点

として加点していきます。

なお、以下は最近の平均的な昼間の状態で当てはめてください。もし実際には経験していない状況がある場合は、仮にそうした状況だったらどうなるかを想定して回答してみてください。

<エップワース眠気尺度>
1. 座って読書をしているとき
2. テレビを見ているとき
3. 人が大勢いる場所(会議の席や劇場/映画館など)、じっと座っているとき
4. 他人が運転する車に、休憩なしで1時間ほど乗っているとき
5. 午後、横になって休憩しているとき
6. 座って人と話をしているとき
7. 昼食後、静かに座っているとき(飲酒はしていないものとする)
8. 自分で車を運転中に、交通渋滞などで2、3分停車しているとき

JESSでは11点以上が病的基準の目安となっているため、合計が11点以上になると過眠の傾向があると考えられます。

ナルコレプシーの場合は、眠気を感じる度合いが非常に高いのが特徴です。治療をしていない状態で11点を下回ることはほとんどありません。とはいえ、JESSで高得点だったからという理由だけでナルコレプシーであると判断することもできません。ナルコレプシーを正しく診断するためには、臨床症状に関する問診と反復睡眠潜時検査(MSLT)が重要であることを理解したうえで、JESSチェックを活用しましょう。

もしかするとナルコレプシーかも?何科にいけばいい?

睡眠を専門とする医師の所属するクリニックを受診する

ナルコレプシーをはじめとした過眠症に対応するためには、睡眠の専門知識が必要です。そのため、ナルコレプシーを正しく診断してもらうためには、睡眠を専門としている医療機関や医師を受診しましょう。間違った診断により適切でない睡眠薬を服用すると、ナルコレプシーの症状が悪化する可能性もあります。

2015年9月現在、日本睡眠学会の認定医師は496名、認定医療機関は98機関あります(日本睡眠学会のホームページで確認できます)。

精神科・神経科・心療内科でも診察可能

認定医・認定医療機関のほか、精神科・神経科・心療内科もおすすめです。軽い不眠がある場合には睡眠薬を処方してもらうだけで治ることもあるので、内科を受診してもよいでしょう。内科的疾患が原因で睡眠障害の症状が出ることもあります。ただし、睡眠に関する専門知識のない内科医には過眠は病気ではないという判断をされることもあるので、注意してください。

ナルコレプシーの症状を軽くするには

ナルコレプシーの症状を軽くするためには、次の点に気をつけて良質な睡眠をとることが大切です。

十分な睡眠時間の確保

日中の眠気をやわらげるためには、夜間の睡眠を十分に確保しなければなりません。日中の眠気を改善するだけでなく、精神刺激薬の使用量を減らすためにも有効です。

体内リズムの整え

起床時間と就寝時間を決めて、規則正しい生活を送りましょう。1日は24時間ですが、人間の体内時計は約25時間周期で動いています。このズレを調整するのが、太陽光です。毎日同じ時間に起きて朝の光を浴びると、体内リズムが整い、毎日同じくらいの時間に眠くなるといわれます。これは、睡眠リズムに影響を与えるメラトニンというホルモンの作用によるものです。メラトニンの分泌は、朝の光を浴びて活動し始めてから約14時間後に始まり、その量が増えるにしたがって眠くなる仕組みとなっているのです。

また、内臓のリズムも体内時計と関係しているため、1日3食を規則正しく食べることも大切です。

環境づくり

熟睡できるよう、不快な音や光を防いで良質な睡眠環境をつくりましょう。部屋の明るさが30ルクス以上になると、睡眠が浅くなるという実験結果もあります。おぼろげに何かが見える程度を目安とし、照明などを調整するとよいでしょう。また、自分にあった寝具を使用することも大切です。

昼間に眠くなるその他の病気

日中に強い眠気に襲われる主な過眠症にはいくつか種類がありますが、以下が、その代表的なものになります。

・睡眠時無呼吸症候群
・突発性過眠症
・反復性過眠症
・周期性四肢運動障害
・むずむず脚症候群
・覚醒不全症候群
・概日リズム睡眠障害
・うつ病

これらの病気について詳しくは、『日中に眠気に襲われる過眠症の種類』をご覧ください。

このように、日中に過眠症にはたくさんの種類があります。正しい治療を受けるためにも、自己判断せずに専門医の診断をきちんと受けましょう。

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この記事の監修ドクター
ベスリクリニック 院長
田中伸明先生

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この記事のキュレーター

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