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赤ちゃんに遺伝する可能性のある病気って?~単一遺伝性疾患編~
遺伝によって発症する病気には、さまざまなものがあります。遺伝である以上、予防が困難なことは否めませんが、早期に発見できれば治療可能な病気もあります。
今回は、赤ちゃんに遺伝する可能性のある病気にはどのようなものがあるのか、「単一遺伝性疾患」を中心に解説していきます。
新生児マススクリーニング検査ってなぜ行うの?
新生児マススクリーニング検査は、生まれたばかりの赤ちゃんを対象に公費で行われている検査です。
目的は、遺伝による病気を早期発見し、できるだけ早く適切な医療につなげるため。
全ての赤ちゃんを対象に、生後1~4週間の間に行われます。
この検査でわかるのは、平成23年までは先天性代謝異常症(フェニルケトン尿症など)を中心とする6つの病気でしたが、平成24年度からタンデムマス法が導入されたことで20種類前後(自治体によって違う)の病気を見つけられるようになりました。
遺伝性の病気は根本的な治療法がないものも多くありますが、中にはすでに有効な治療法が確立されているものもあり、この検査はそういった病気の有無を新生児のうちに調べ、異常があればすぐに専門の医療機関につなげることを目的としています。
先天性代謝異常症はどうやって遺伝する?
先天性代謝異常症は、「単一遺伝性疾患」と呼ばれるタイプの遺伝による病気です。
私たちの遺伝子は、両親から1つずつもらった遺伝子が対になっていますが、その2つの遺伝子の組み合わせによって、病気が発症するかどうかが決まるのが、単一遺伝性疾患です。
この仕組みは、血液型の遺伝と全く同じ。メンデルの法則に則って遺伝することから、「メンデル遺伝病」とも呼ばれます。
先天性代謝異常症とは、特定の遺伝子の異常により代謝がうまくいかなくなる病気の総称。フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症などがあります。
単一遺伝性疾患(メンデル遺伝病)とは?
単一遺伝性疾患は、その遺伝の仕方によっていくつかのタイプに分けられます。
主なものについて、遺伝の仕方の違いと、病気の一例をご紹介します。
(1) 常染色体優性遺伝
対の遺伝子のうち一つに異常があれば発病するタイプの病気です。
・家族性高コレステロール血症
血液中の悪玉コレステロールを細胞内に取り込むためのLDL受容体が、遺伝子の異常によってうまく機能せず、血液中に留まってしまう病気。適切な治療が行われないと、動脈硬化が進行してしまいます。
・ALDH2欠損症
お酒を全く受け付けない体質の人がこれにあたります。アルコールの代謝により生じるアセトアルデヒドという物質を分解する、ALDH2という酵素が欠損してしまっているため、アルコールを飲み過ぎると頭痛や吐き気、二日酔いが生じます。
(2) 常染色体劣勢遺伝
対の遺伝子のうち、両方に異常がある場合に発症するタイプの病気。片方だけの異変であれば、もう片方がカバーしてくれます。
・フェニルケトン尿症
先天性代謝異常症の一つ。アミノ酸の代謝がうまくいかず、カラダにフェニルアラニンというアミノ酸が蓄積します。このことで精神発達に障害をきたしたり、色素がつくれないために髪の毛や皮膚の色が薄くなったりします。発症頻度は8万人に1人とまれです。
・先天性副腎過形成症
副腎皮質でホルモンを作り出すために必要な酵素が、遺伝子の異常により機能せず、ホルモンを適切に作り出せないことで副腎不全などを引き起こす病気です。
(3) X連鎖劣性遺伝
性染色体にはX染色体とY染色体があり、XとYをそれぞれ1本ずつだと男性、Xが2本だと女性になります。このうちX染色体に遺伝子変異がある場合に発症するのがこのタイプ。
女性はXが2本あるので片方だけの遺伝子変異では発症しませんが、男性はXが一つしかないので受け継いだ場合には必ず発症します。
・色覚異常
色を正確に識別できない目の病気。見え方は個人差が大きく、多くは日常生活に困るほどではありません。女性では500人に1人の割合なのに対して、男性は20人に1人と圧倒的に多くなっています。
早期発見、早期治療のために検査を
遺伝する病気というと怖い印象がありますが、治療により健康な赤ちゃんと同じように育つ病気もたくさんあります。
まずは検査を受け、必要があれば早期治療を行うことが、赤ちゃんの将来にとって何よりも重要です。
★今回のポイント★
・新生児マススクリーニング検査で、遺伝性の疾患を早期発見できる
・単一遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は、対になった遺伝子の組み合わせによって発症するかどうかが決まる
・赤ちゃんの生涯の健康のためにも、きちんと検査を受けることが大切
この記事の監修
産科医 竹内正人先生
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