男性不妊の代表的な3大疾患「精索静脈瘤」・「精路閉塞」・「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」って?

※写真はイメージです
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不妊の原因の半分は男性にあるからこそ、妊活はパートナー頼みではなく自ら調べ、実行することが大切です。
これから不妊治療を始める人に向け、男性不妊専門の永尾光一先生に詳しく教えていただきました!

今回は男性不妊の代表的な3大疾患「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」・「精路閉塞(せいろへいそく)」・「低(てい)ゴナドトロピン性性腺機能低下症(せいせいせんきのうていかしょう)」をご紹介します。
男性不妊の原因で多いのが、この3つの病気。手術・治療をすれば改善するので、怖がらずにどんな症状か知っておきましょう。

監修の先生

2人で読むはじめての「男性不妊治療」 #2
※参考:「妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2022-2023」

 

【3大疾患・1】精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)

【元気な精子がつくれない】精索静脈瘤

元気な精子がつくれない【精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)】。
その症状や治療について知っておきましょう。

【精索静脈瘤】症状・原因

精索静脈瘤の症状・原因

精巣や血管などを覆う精索部の静脈が拡張して血流が悪化することで、精巣の温度が上がります。
熱に弱い精子には不適切な環境になり、運動率も下がり、健康的な精子がつくられにくくなる。乏精子症や運動率低下の原因に。

【精索静脈瘤】3年間放置すると…

※2010年 WHO精液基準値(銀座リプロ外科調べ)
※2010年 WHO精液基準値(銀座リプロ外科調べ)

精索静脈瘤を3年間放置すると、総運動精子数が27分の1に悪化。

【精索静脈瘤】どんな手術をする?

【精索静脈瘤】どんな手術をする?

手術方法は複数あります。
へその脇あたりを切開し、腎臓に近い精索静脈を顕微鏡下に縛る方法、そけい部を小さく切開して精巣に近い精索静脈顕微鏡下にまとめて縛る方法がメジャー。
「ナガオメソッド」は顕微鏡と特殊器具を用い、悪い逆流静脈だけ1本1本確認して結紮(けっさつ)します。機関によって異なりますが、いずれも日帰りか1泊2日程度の入院です。

【3大疾患・2】精路閉塞(せいろへいそく)

【3大疾患・2】精路閉塞(せいろへいそく)

射精しても肝心の精子がない!【精路閉塞(せいろへいそく)】。
その症状や治療について知っておきましょう。

【精路閉塞】症状・原因

【精路閉塞】症状・原因

精管や精嚢などの精路が詰まっているため、射精しても精液の中に精子が含まれていなかったり、数が少ないこと。先天的な原因のほか、尿道炎や外傷といった後天的な理由も。

【精路閉塞】どんな手術をする?

主に精管をつなぎ直す、精管と精巣上体をつなぐ、精路の詰まっている部分の原因を取り除いて再通させるという3つの手術があります。
いずれも入院期間は3泊4日ほどで、改善すれば自然妊娠が期待できます。パイプカット再建は日帰り手術も可能。

【3大疾患・3】低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(ていごなどとろぴんせいせいせんきのうていかしょう)

ホルモンが作用せず、男性不妊の原因に【低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(ていごなどとろぴんせいせいせんきのうていかしょう)】。
その症状や治療について知っておきましょう。

【低ゴナドトロピン性性腺機能低下症】症状・原因

脳の視床下部や脳下垂体から分泌されるホルモンが精巣に作用して精子はつくられます。それらホルモンが低下すると男性不妊の原因に。
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(MHH)は、先天的な陰茎や精巣の発育不全などのほか、勃起や射精ができなくなる後天性の場合も。

【低ゴナドトロピン性性腺機能低下症】どんな治療をする?

【低ゴナドトロピン性性腺機能低下症】どんな手術をする?

ホルモンの補充療法が主となり、手術ではなく定期的なホルモン剤を自己皮下注射で治療します。
特定疾患治療研究事業対象疾患として都道府県からの公費の負担でできる場合があります。

【他にもある!】男性に原因のある症状

●精巣の横にある副睾丸(精巣上体)に炎症が起こって腫れる【副睾丸炎】
●陰嚢の中に睾丸(精巣)が入ってない状態で、先天的な異常である【停留精巣】
●先天的な性染色体異常が原因の【クラインフェルター症候群】
●尿道を取り囲む前立腺に炎症が起こり、排尿障害や痛みなどが起こる【前立腺炎】
●十分に勃起できない、勃起が持続しない【ED・勃起不全】
●膀胱に向かって射精してしまうため、精液量が減る【逆行性射精」
など

不妊治療のステップアップごとに男性がすることは?

男性側の治療を経て、いよいよ女性とともに不妊治療スタート!
それぞれのステップで男性は何をするのでしょうか?

タイミング法

タイミング法

妊娠しやすい排卵日前後の3〜5日間に性交渉を持つこと。基礎体温の記録や排卵日検査薬などで自分たちでもできるが、ホルモン値や卵胞のサイズの計測により、医師の的確な予測に基づいた指導で妊娠を目指します。

★【タイミング法】で、男性がすること
排卵日前後の妊娠可能期間に向け、状態のいい精子をつくるため約3日間禁欲してから性交をしましょう。精子が生きられるのは子宮の中では3日程度、腟の中では1日程度。可能性を高めるため排卵前後3日間はできるだけ性交を。

人工授精

人工授精

タイミング法の次のステップで行う治療法。排卵の時期に合わせ、子宮の入り口から管を入れて精液を子宮内へ直接注入します。タイミング法よりも少し奥の子宮内へ精液を注入するだけで、副作用はほとんどありません。

★【人工授精】で男性がすること
採精の4日前にマスターベーションもしくは性交で射精をし、その後3日間の禁欲を。精子は射精後、時間が経つほど動きが遅くなります。自宅で採精した場合、人肌に保温しながらできるだけ早くクリニックへ持って行きましょう。

体外受精・顕微授精

体外受精・顕微授精

体外受精は体内から取り出した卵子を体外で受精させ、正常に発育した胚を子宮内に移植する方法。顕微鏡を用いて受精を行う顕微授精は、体外受精よりも精度が高いぶん、費用が高額になることが多いです。

★【体外受精・顕微授精】で男性がすること
人工授精と同様、採精前に3日間禁欲して運動率のいい精子を。確率を高めるため、基本的な疾患を取り除いてからチャレンジすることも。精子の運動率が低い、数が少ない場合は顕微授精になる可能性が高くなります。

■監修

永尾光一 先生

●撮影/合田和弘
●イラスト/山本啓太
●構成・文/津島千佳

※記事内容、日付、監修者の肩書、年齢などは掲載当時のものです。

▼『妊活たまごクラブ 不妊治療クリニック受診ガイド 2022-2023』は、妊活から一歩踏み出して、不妊治療を考え始めたら手に取ってほしい1冊。

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この記事のキュレーター

妊娠・出産・育児の総合ブランド「たまひよ」。雑誌『妊活たまごクラブ』『たまごクラブ』『ひよこクラブ』を中心に、妊活・妊娠・出産・育児における情報・サービスを幅広く提供しています。


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