安藤哲也「子育てがうまくいく秘訣は、ママがひとりで頑張りすぎないこと」〜夫婦で笑って育児を楽しむコツ Vol.5〜

「育児も仕事も人生も笑って楽しめる父親を増やす」ことを目的に、今から10年前の2006年に設立された、父親支援事業を行うNPO法人「ファザーリング・ジャパン」。その代表を務めている安藤哲也さんは、「夫婦でうまく育児をするために」といったテーマで、パパだけでなく、ママも含めた夫婦向けの「両親学級」として、数多くの講演を行っています。そんな安藤パパに、夫婦で笑って育児を楽しむためにはどうすればいいのか、そのコツについて自身の体験も交えつつ、語っていただきました。

5回目となる今回は、パパに育児に協力的になってもらうための秘訣について、です。

パパOSをアップデートするために

男性はパパになると、実家にいる自分の父親像、メディアなどから刷り込まれた「父親モデル」に囚われてしまって、同じように振る舞ってしまうことが多いものです。しかし、時代と共に父親を取り巻く環境は、自分が子どもだった頃と大きく変わってきているんですよね。

現代ではおそらく、自分の父親と同じように振る舞っていてはうまくいかないことのほうが多い。だから、私がよく言うのは、“パパのOS”をアップデートすべきだ、ということです。

なかなかパパOSをアップデートできない人を数多く見てきましたが、比較的、長男として育った人のほうが、その傾向が強いように思います。私は次男でしたが、やはり実兄を見ているとそういったことを感じます。どうしても、すり込まれてしまったDNAみたいなものがあるのでしょう。父親も長男には期待しますしね。長男も父親を「偉大な存在」と捉えて、自然と真似をしてしまう。例えば「家事をしないことが男らしい」といったことです。

しかし、共働きが当たり前になったりしている今の時代にはそぐわない部分が多い。だから自分の父親を反面教師にして、自分の今の家族にとって最適なパパOSにアップデートできるかどうかが、重要になります。

さらに、パパにとっては、会社の上司も父親と同等のロールモデルになってしまいがちです。夜遅くまで働く、休みを取らないなど、そういった上司の働き方を毎日職場で見ていると、知らず知らずのうちに、「それでいいんだ」と踏襲してしまう。それではいけません。自分の家庭状況に合った、スマートな働き方を身につけるべきだと思います。

当たり前のことですが、誰しも1日は24時間しかありません。子どもが産まれたからといって30時間に増えるワケではない。独身時代に、毎晩会社で夜遅くまで残業していた人が、子どもができたからすぐに帰宅するようには、多分、ならないのです。

育児の大変さを想像できないパパもいる!?

仕事を最優先する生活が当たり前だった人ほど、パパOSのアップデートは難しいでしょう。だからこそ、私はプレパパたちに、こうアドバイスするのです。

「子どもが産まれる前からトレーニングとして、週に1回でいいから夜7時までに帰ってみて」 急に早帰りはできないので、子どもが産まれる前から、徐々に早く帰る日を増やしていく訓練が必要です。

「ウチは妻が専業主婦で育児を任せられるのに、何で自分が早く帰らないといけないんですか?」と言う男性もいますが、そのパパは、子育ての大変さを全然理解できていないのでしょう。実家の親モデルがそうだったので、何らそれで問題ないのだと思っている。これもOSの問題です。

そこで、私はこう言います。「じゃあ、1日、パパだけで育児をやってごらん。もたないよ。2時間で音を上げるんじゃないかな」と。 1人でずっと育児をすることは大変なのだということをパパは知るべきです。そのためには、父親も短期間でいいので、産後の育休を取得しておいたほうがいいでしょう。

それを体験した父親の多くは、子育てのピーク期はできるだけ早く帰ろうと努力するし、ママに対しても苦労をねぎらってあげたり、話を聞いてあげたり、ママがリラックスできる時間を作ってあげたりするようになります。

とはいえ、男性の育休取得は、制度はあれど、まだまだ日本の企業社会ではハードルが高い。まずは、帰宅時間を早める努力から始めてみて欲しいですね。

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パパスイッチのカギは、ウルトラマン気質!

ではどうやったら、パパOSをアップデートして、パパスイッチを入れてもらうことができるのか。 これはママへのアドバイスなのですが、しっかりとママの側から「ヘルプのサイン」を出すべきだと私は思います。逆に良くないのは、ママが「全部、自分でやろう」と思ってしまうことです。

「パパは家族のために仕事で頑張っているんだから、私も家のこと頑張らなきゃ」って、どうしても無理をしてしまうんですよね。つまり、ママのOSも古い。そうすると結局、パパを育児から遠ざけてしまうのです。 育児や家事がしんどくなるのは能力の問題ではない。あんな大変なことを「一人でやっている」からです。だから、ママひとりですべてを抱え込んで、無理をすることはないと思います。

ママ的には無理しているのに、まあそこそこに家のことが回っていると、一方のパパは「あ、今のままで大丈夫なんだ」と思ってしまい、「ママをサポートしよう」という意識は芽生えません。

だから、辛かったら「これ以上、ひとりではできません!」といった感じで、白旗を1回、あげてみればいいんじゃないでしょうか。男性というのは、「助けて」とハッキリ言われれば、ちゃんと助けにやってくるものです。男性の多くは、“ウルトラマン気質”なんですから(笑)。

「もう、私、ひとりだと無理だから」と、ハッキリ伝えたほうがいい。「え? そうなんだ。早く言ってよ」と、多くの男性は思うはずです。 ファザーリング・ジャパンのあるパパ会員は、ママが右手を骨折してしまって包丁も握れなくなった。それがキッカケで、彼は家事を手伝うようになって、次第に料理に目覚めていき、今や朝ご飯はすべてパパが作るようになったのです(笑)。

だから、もっとママたちはヘルプのサインを出すことでパパに気づきの機会を与え、ウルトラマン気質を大いに刺激して、その気になってもらうのが一番の早道だと思います。

男性の多くは「仕事で自分が誰かの役に立った」とか、「家族を俺が救った」といった、ヒーロー的なストーリーが大好きなんですよ(笑)。もし、パパがサポートしてくれて嬉しかったら、感謝して、褒めてあげてください。すると、新米パパでも向上心が芽生えて、きっとパパOSがアップデートされることでしょう。

ママがひとりでがんばりすぎないことが大事

これから子育てを始めるママたちに言いたいのは、ひとつです。繰り返しになりますが、「ママひとりでがんばりすぎないで」ということですね。よく、在宅介護をひとりで背負い込んで、一生懸命やっている人たちには、「がんばりすぎない介護」が必要だとよく言われますが、それと同じです。

「良い母親」を目指してしまって、ひとりで何でもやろうと頑張り過ぎてしまえば、おそらく疲れてしまって、体調も優れないし、マインドも萎えてしまうことでしょう。そうなると育児が楽しくないし、笑顔も消える。そして子どもにもそれが伝わってしまいます。

だから、ママひとりでがんばりすぎないで、しっかりパパにヘルプサインを出して協力してもらうこと。結果的に、それでママの育児もグッと楽になるだろうし、夫婦の関係もうまくいく。パパも子どもと、より仲良くなって育児が楽しいと思い、親子の絆も深くなる。だから「明日も早く帰ってこよう」と考えるのです。

そうなることが希望ですよね?パパが育児を楽しむためには、「OSのアップデートが大事なのだ」ということを覚えておいてくださいね。

この記事のキュレーター

NPO法人ファザーリング・ジャパン設立者・代表理事&NPO法人タイガーマスク基金代表理事・1962年東京都生まれ。二男一女のパパ。「笑っている父親を増やしたい」と、年間200回以上の講演や企業セミナーのほか、絵本と音楽を融合させた絵本ライブ「パパ ’s絵本プロジェクト」などで全国をパワフルに飛び回る。厚労省「イクメンプロジェクト推進チーム」や東京都「子育て応援とうきょう会議」などの委員も務める。『父親を嫌っていた僕が「笑顔のパパ」になれた理由』、『パパの極意から仕事も育児も楽しむ生き方』、『パパ1年生』など著書多数。


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